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2017年9月10日 (日)

「よう!」

Photo
ちょっとお茶を買いに立ち寄ったコンビニで雑誌をパラパラ見ていたら、私は不意におならがしたくなった。
周りを見回すと、私と同じように数名の客が雑誌を見ていた。


ここで他の客に気付かれないようにおならをすることに、私はかなりの自信があったが、音はしなくても、万が一、匂いが発生した場合、ごまかすことは出来ないだろう・・・・・・。


そこで私は雑誌コーナーを離れ、商品棚の裏へ向かった。
そこは、文房具や日用品が置かれているコーナーで、幸いなことに一人も客はいなかった。


私は念のため、通路を中央付近まで進んでから、おならを放つつもりでいた。


予定の場所までたどり着き、私は少しずつ下腹に力を入れて行った。


おならというものは少しずつ下腹に力を入れて行き、肛門をゆっくりと緩めて行けば、ガスは「スーッ」と抜けて行き、ほとんど音を出さずに放出できるものなのだ。


私はこの技術を小学校四年生の時に習得した。


長年技術を磨いて来て、成功率は限りなく100パーセントに近かったこともあり、私は失敗することなどこれっぽっちも考えていなかった・・・・・・。


ところが想定外のことが起きた。
おならを雑誌コーナーでしないで我慢していたため、ガスが肛門の入口付近まで下りて来て停滞して溜まっていたのだ。


分かりやすく言えば、パンパンに膨らんだちっちゃな風船が、肛門の内側でスタンバイしているようなものである。


こうなると、相当細心の注意を払って肛門を緩めて行かないと、ガスは「ブーーッ!」と一度に放出されてしまうだろう。
音を立てずに放屁するにはかなり難易度が高い状況になってしまった。


しかし、今さら店の外へ出て行く余裕はない。
ここはもう自分を信じてトライするしかなかった・・・・・・。


私は周囲を気にしながら、少しずつ下腹に力を加えて行き、肛門を少しずつ緩めて行った。


予想通り、ガスはもう肛門の入口付近でスタンバイしていたので、抜けて行くガスの量を少しずつコントロールすることは困難だった。


「これはまずいかな」と思った瞬間、私の背後から「よう!」という大きな声がした。
私は誰かに声をかけられたのかと思い振り返った。


すると、私の少し先に商品のガムテープを手に取って見ている男性がいた。
しかし、いくら考えても知らない顔だった。


男性も私の方をポカンとして眺めていたので、どうやら私が「よう!」と声をかけたのかと思っているらしい。


背後にそれらしい人間がいないところを見ると、商品棚の向こう側にいる誰かが、知り合いを見つけて声をかけただけなのかもしれない。
しかし、それにしては全く話し声が聞こえて来ない。


それにどう考えても、さっきの「よう!」という声は、私の背後から聞こえて来た。
それも真後ろからだ。


しかし、私の後ろには誰もいなかった・・・・・・。


「もしかして、幽霊?」
しかし、白昼堂々と幽霊があんなに大きなはっきりした声で、「よう!」などと声をかけるものか。


そんなことを考え始めると、何だか自分の背後に見えない誰かがいるんじゃないかと気になって、何もない空間に手を伸ばしてみたり、手で「パッ、パッ」と払ったりしていたら、先ほどのガムテープの男性が少し引いているのが分かった・・・・・・。


少し頭の中を整理しよう。


「よう!」という声は私の真後ろから聞こえて来た。


しかし、私の後ろには誰もいなかった。


少し先の離れた場所にガムテープの男がいたが、見知らぬ顔で声の主ではなさそうだった。


では、先ほどの「よう!」という声は何だったのか。


「よう!」と聞こえはしたが、もしかして人の声ではなかったのか。


人の声ではなかったとすると、いったい何の音だったのか。


あの時、私の背後でいったい何が起きていたというのだろう・・・・・・。

 

Photo_2

少し記憶の糸を手繰り寄せてみよう。


そうだ、私はあの時、おならをコントロールすることに必死になっていたのだ。


そして、「これはまずいかな」と思った瞬間、「よう!」という大きな声が背後でしたのだ。


あの時、私は確かにおならをしたはずだ。


ところが、「よう!」と声をかけられ、後ろを振り返って、いったい誰に声をかけられたのかを確かめることに夢中になっていて、おならのことなどすっかり忘れていた。


あの時はどう考えても、「よう!」という人の声にしか聞こえなかったが、いくら確かめてみても、私の背後には誰もいなかった。


そして、誰もいなかったということは、人の声ではなかったと考えるのが自然だろう。


ところが、「この場所で他に大きな音がする可能性がありそうなものは?」と考えて、あたりをきょろきょろと探してみるが、不思議なことにそんなものはどこにも見当たらない・・・・・・。


冷静になって考えてみると、人の声以外に大きな音がする可能性があるものが一つだけあった。


そう、私のおならである。


様々な可能性を引き算して行くと、もうそれしか考えられなかった。


あの、「よう!」という声は、私の尻が発した「声」だったのだ。


それにしても、おならがあんなにもはっきりと「言葉」を発したのを私は初めて聞いた。


決して大げさなことを言っているのではなく、あの時「よう!」と出たおならは誰が聞いても人の声だったと思う。
それくらい、レベルの高い「よう!」だったのだ。


おならが「よう!」と出てくれたおかげで、「おならをしたことを周りの人に悟られずにすんだな~」などと考えていたら、私は何だか無性におかしくなって来た。


必死に笑いを堪えながら、コンビニに入った目的であるお茶を、半泣きになりながら無事に購入すると、私は逃げるようにそそくさと店の外へ飛び出した。


帰りの道中、何度か頭の中で勝手に「よう!」が再生され、私は歩道で数回爆笑し、その後も顔を奇妙にゆがませながら、歩き続けることになるのだった。


もはや、不審者を通り越して、変質者に近かったと思う・・・・・・。


(画像上はナンテンハギの花、画像下は羽化して間もないアカボシゴマダラ)

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