赤いコンパクトラジカセの思い出
ラジカセという言葉はもはや死語になってしまったのだろうか。
現在ではラジカセの名前の一部にもなっているカセットテープ自体を、お店で全く見かけなくなってしまったのだから、それも無理のない話かもしれない・・・・・・。
ところで、「そもそもラジカセとは一体なんなのか?」と思っている人のために一応説明すると、「ラジカセ」とはラジオとカセットテープレコーダーが一体になったオーディオ機器のことをいう。
「ラジオカセットテープレコーダー」を略して「ラジカセ」というのだ。
レコード全盛の時代、ステレオ(現在のコンポ)は大きくて重量があり、置き場所が限られるものだった。
学生の頃は自分の部屋にステレオがあるやつなんて皆無で、レコードを聴くためには、ステレオが置かれている部屋へ、わざわざ出向かなくてはならなかった。
ということは、レコードをかければ、その音楽は自動的に家族にも聴かれることになる訳で、「もっと手軽に自分の部屋で音楽を聴けたらいいのにな~」という声から生まれたのがラジカセだった。
ラジカセが誕生したことで、レコードをカセットテープに録音して、自分の部屋で音楽を聴いたり、ラジオを聴いたりすることが出来るようになったのである。
それにしても、こんなことをいちいち説明しなくてはならない時代がやって来るとは思ってもみなかった・・・・・・。
私の記憶にある最も古いラジカセは、私が幼いころに父が持っていたA4サイズほどの大きさのもので、右半分に大きなスピーカーが一個付いていて、左半分がカセットデッキになっていた。
色は黒一色で、見た目はラジカセというよりも、ラジオの印象が強かったと思う。
当時はラジオやラジカセは、このような長方形の黒っぽい色合いのものが多かったのだが、私が小学校低学年のころに、そのイメージを一新するラジカセが発売になり話題になった・・・・・・。
サンヨーから発売された、「おしゃれなテレコU4」は横に細長い斬新なフォルムで、左右に一つずつスピーカーを配して、中央にカセットデッキが一個付いていた。
ボディカラーはなんと真っ赤で、それまでのラジカセの地味なイメージとは真逆の派手な色に、当時は誰もが衝撃を受けたものである・・・・・・。
それにしても、なんで私がこんなにも鮮明に、このことを覚えているのかというと、当時「おしゃれなテレコU4」はテレビCMはもちろん、雑誌など出版物にも大きく広告を出していて、「見ない日はない」というくらい大々的に宣伝をしていたのだ。
テレビCMではラジカセと同じカラーの、赤のビキニを付けたお姉さんが、大きな黄色いサーフボードと、コンパクトな赤いラジカセを持って、ニコニコ笑っていたのを今でもはっきりと覚えている。
しかし、それが誰だったのかと聞かれるとちょっとよく分からない。
そもそも小学校低学年では、そんなことにはあまり興味はなかったのだ。
当時の私はアイドルや音楽にも全く関心がなかったので、話題にはなっていても、そのラジカセが欲しいとはこれっぽっちも思わなかった。
私がアイドルやラジカセに興味を持ち始めたのは、同級生の誰もが色気付いて来る小学校高学年になってからだった。
そしてこのころには、ラジカセはダブルデッキに進化していて、テープからテープへダビングが出来たり、連続再生の機能が付いたりしていた。
家電量販店ではラジカセは最も売れる商品となり、棚にはずらりと各メーカーのラジカセが並べられていた。
当時のラジカセのボディーカラーは赤が主流で、いちおう色違いの黒もあったものの、流行りの赤を選ぶ客が圧倒的に多かったという。
ちなみに当時私が悩んだ末に購入したラジカセは、TOSHIBA「SUGAR」で、やはりボディカラーは赤を選んでいた。
TOSHIBA「SUGAR」は、当時アイドルだった原田知世さんがCMをやっていたので、覚えているかたも多いのではないだろうか。
私は別に原田知世ファンという訳ではなかったが、異様なくらい横に長い斬新なフォルムが気に入って、これに決めたのを覚えている。
この頃のラジカセはボディに録音用のマイクが内臓されていた。
ボディの片隅に爪楊枝を「プスッ!」と刺して開けたような、小さな穴がポツリと開いていて、これがマイクになっており、ここに話しかけることでテープに自分の声を簡単に吹き込むことが出来たのだ。
当時は誰もが一度は使ったことがある機能だと思うが、ほとんどの人はテープに吹き込まれた自分の声と、自分が普段しゃべっている声のギャップがあまりにも大きくて、ショックを受けたのではないだろうか。
テープに吹き込まれた自分の声は、「とてつもなくヘンな声」に聴こえるのだが、「他人にはこのように聴こえているのだ」と聞かされ、「もう一言も声を発したくない」とふさぎ込んだものである・・・・・・。
また、私はラジカセの録音機能を利用して、おならが出そうになるたびにラジカセに尻を向け、おならをテープに録音して行き、自分の「おならメドレー」を作り上げて行くという作業に熱中していた時期があった。
あとからそのテープを再生してみると、延々と自分のおならが、「ブー、ブーゥ、ビー、プー、プ~ゥ」などと聴こえて来て、あまりのバカバカしさに、床を転げ回って大笑いしたのを覚えている・・・・・・。
ラジカセと言えばAM、FMラジオだけでなく、なぜかテレビの音声も受信することが出来た。
テレビなのに肝心の映像がなくて、音声だけでは何の意味もないと思うのだが、なぜこのような機能が付いていたのか未だに謎である。
ラジカセ購入当初はなんの役にも立たないと思われていたテレビの音声受信機能だが、当時はテレビの深夜番組のちょっとHな番組を見たくて、この機能を利用する者が多かった。
小学校高学年ぐらいでは、自分の部屋にテレビがあるなんていう者は皆無で、せめて音声だけでも聴きたいと思って、男子はみんなこれを利用していた。
ただ音声だけでは、「いや~ん」とか「ああ~ん」などと言われても、いったい何が起こっているのか全く分からず、非常にもどかしい思いをして、悶々としていたものである・・・・・・。
この当時のラジカセはコンパクトさが売りで、乾電池を利用することで、ラジカセを持って手軽に各部屋を行き来することが出来た。
ところがこの時は誰も予想していなかったが、この後ラジカセは大型化の道を歩み始めることになるのである・・・・・・。
1982年、レコードに変わる新しいメディアとして、CDの音楽ソフトの発売が始まった。
CDは発売開始からわずか2年ほどでレコードの売り上げを上回る。
そしてその数年後から、ラジカセはCDを再生することが出来る「CDラジカセ」に進化する。
CDラジカセはびっくりするほど巨大なボディで、今考えると現在のミニコンポをはるかに上回る大きさだったように思う。
コンパクトでどこにでも手軽に持ち運べるのがラジカセの良さだったのに、CDラジカセは大きく重い丸太のようなボディで、あまりの重さに据え置いて使うしかなかったのである。
そしてCDラジカセからは、それまでのラジカセのおしゃれでポップなイメージは一切取り払われ、まるで装甲車両のような印象の、真っ黒で重厚なボディに変貌していた。
「重低音」が流行りだしたのもちょうどこの頃で、家電量販店では巨大なCDラジカセから、腹の奥底までズンズン振動して来る重低音が、絶えず鳴り響いていたのを覚えている・・・・・・。
そしてそれから数年後にMDが世に出ると、ラジカセはじょじょにその勢力を縮小して行き、小型軽量化されたミニコンポがオーディオ機器の主流となって行ったのだ・・・・・・。
アイドル全盛と言われたあの頃に青春時代を過ごした私としては、ラジカセと言えばやっぱり赤いボディのコンパクトラジカセを思い出す。
そしてあの頃はどこの家にも勉強机の片隅に、必ず赤いコンパクトなラジカセが置いてあって、勉強の息抜きに音楽を聴いたり、ラジオの深夜放送にハマったりしている者が多かった。
そして思春期というのは、誰でも感情の起伏が激しいもので、笑ったり、泣いたり、怒ったり、叫んだり、踊ったり、恋をしたり、どうにもならないことを悩んでみたりと、今では考えられないくらい、日々さまざまなことを経験していたように思う。
そしてそんな毎日を過ごして行く中、どんな時もラジカセはいつもいっしょで、スイッチを入れればいつもの音楽が当たり前のように流れて来て、その瞬間、高ぶった気持ちをスーッと落ち着かせてくれて、いつもの自分を取り戻すことが出来ていたのだ・・・・・・。
そう、あの赤いラジカセは私にとって青春時代を共に過ごした「戦友」だったのである・・・・・・。
(画像上は林縁で咲くホトトギスの花。画像下は涼しくなって秋のキノコが目立つようになって来た)
「エッセイ」カテゴリの記事
- ビン入りコーラのうわさ(2026.07.15)
- 中国のビックリ人間(2026.07.08)
- 窓付きポテトチップス(2026.07.01)
- 昭和の頃によく見た光景(2026.06.24)
- 妙に疲れた1日・・・(2026.06.17)
「花」カテゴリの記事
- 中国のビックリ人間(2026.07.08)
- 妙に疲れた1日・・・(2026.06.17)
- どこにしまったか忘れる・・・(2026.06.03)
- ビックリ人間のおっぱい(2026.05.20)
- セルフレジ(2026.05.06)
「キノコ」カテゴリの記事
- 中国のビックリ人間(2026.07.08)
- いも作くん(2025.10.29)
- 刺さったトゲを放置していると死ぬ(2025.09.03)
- 牛乳に相談だ。「ラブレター篇」「ライオン篇」(2024.11.25)
- 「謎フレーズ探偵」ポチる(2024.09.02)
「昭和」カテゴリの記事
- ビン入りコーラのうわさ(2026.07.15)
- 中国のビックリ人間(2026.07.08)
- 窓付きポテトチップス(2026.07.01)
- 昭和の頃によく見た光景(2026.06.24)
- ツナマヨのおにぎり(2026.05.27)
「CM」カテゴリの記事
- 3DOリアル(2026.04.22)
- 掘ったイモいじくるな!(2026.02.04)
- ゆく年くる年(2025.12.24)
- いも作くん(2025.10.29)
- トイレにはキンモクセイ(2025.07.30)
「昭和家電」カテゴリの記事
- 3DOリアル(2026.04.22)
- テレビの時報時計(2025.06.25)
- レコードの思い出(2025.04.09)
- ビデオのバーコード予約とGコード(2023.08.04)
- 昭和の乾電池事情(2022.11.13)


コメント