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2020年5月15日 (金)

「昭和の商店街」 八百屋編

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私が子供の頃、商店街の八百屋では、天井からヒモをぶら下げて、店の中央付近に大きなザルが吊るしてあった。


このザル、いったい何をするためのものかと言うと、じつはここにお金を入れてあったのである。


早い話がザルがレジ代わりになっていたのだ。


店の主人はこのザルのことを、「銭かご」と呼んでいたが、これはどうやら通称だったらしい。


今だったら物騒でとてもじゃないがそんなことは出来ないが、昭和の頃にはごく普通に見られる光景だった。


当時はお客さんから受け取ったお金をそこに入れて、お釣りもそこから取り出して渡すというのが当たり前で、誰もそのことを不思議に思ったりはしていなかった・・・・・・。


ザルがレジ代わりだと、店のどこにいても、その場でお客さんから代金を受け取り、お釣りを渡すことが出来るという利点があった。


いちいちレジの置かれている店の奥まで行き、お釣りを取って来るという手間が省けるので、すぐに次の客に対応することが出来たのだ。


ザルを吊ってあるヒモは、下側がゴムになっていたので、手元まで引き寄せて小銭を探すことも出来て便利だった。


ザルがレジ代わりとは言うものの、さすがにザルはレジのように商品の計算まではしてくれない。
このため八百屋の主人はいつも腰に大きなそろばんを挿して接客をしていた。


そして商品の計算をする時は、そのそろばんをサッと取り出して、パチパチと弾きながら計算をしていた。


八百屋の主人が持っていたそろばんは、木製で幅広のとても大きなもので、パチパチと珠を弾く音がとても心地よかったのを、今でもはっきりと覚えている・・・・・・。


そして当時は買った野菜は新聞紙にくるんで、「ハイ、どうもありがとう!」と、そのまま手渡されるだけだったので、買い物に行く時は必ず「買い物かご」を持って歩くのが当たり前だった。


ちなみにうちでは母が、竹を編み込んで作ってある「買い物かご」と、予備の布製の袋をその中に一つ入れて、いつも持ち歩いていたのを覚えている。


このように当時は竹などを編み込んで作ってある、底の広い「買い物かご」がどこの家にも必ず一つはあって、買い物に行く時はみんなその「買い物かご」を持って歩いていたものだ。


それがいつの間にか、「レジ袋」が世の中に現れて、「買い物かご」を持って歩く習慣は次第になくなって行った。


今でも「買い物かご」を持って歩いている主婦は、きっとサザエさんくらいだろう。


そして今の時代は、「買い物かご」なんて言ったら、きっとスーパーに置いてある、あのグレーのプラスチックで出来たかごを思い浮かべる人がほとんどなのではないだろうか。


しかし、皮肉なもので、近年になって、海洋プラスチック問題が叫ばれるようになり、レジ袋は廃止の方向に向かっている。


今は小さく折りたためるエコバックが人気だが、もしかしたら昭和の頃によく見られた、あの「買い物かご」が復活する日も近いのかもしれない・・・・・・。


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ところで商店街の八百屋と言えば、いま考えると不思議に思うことがある。


当時、八百屋では夏になると、なぜか毎年のようにカブトムシを売っていた。
それも成虫ではなくて、大きなガラス瓶に入った幼虫を売っていたのだ。


カブトムシの幼虫は時期になると、店の一角に山積みにされて、各種の野菜よりも大量に置いてあったように思う。


カブトムシの幼虫は腐葉土を食べて育つので、大きなガラス瓶の中には、腐葉土がギュウギュウに詰め込まれていた。
そしてその中に大きな幼虫が、一匹だけ入れられて売られていたのだ。


じつはカブトムシの幼虫はかなりの大食いで、飼育していると成虫になるまでに、何度も何度も餌の腐葉土を交換しなくてはならない。


ところが八百屋で売られていたカブトムシの幼虫は、あと1~2週間程度で蛹になる大きな幼虫を選んで、瓶に入れて出荷していたので、エサ交換の必要がなかったのだ。


このため子供たちはエサ交換の手間もなく、カブトムシが幼虫から蛹になり、成虫に羽化するまでを手軽に観察することが出来たのだ。


私は小学校低学年の時に、この八百屋で売られていたカブトムシの幼虫を、夏休みの自由研究に選び、日々ガラス瓶の壁越しに幼虫を観察し、観察日記を付け続けていた。着ける


ところが肝心の蛹になるころになって、なぜか幼虫が瓶の中央付近に移動してしまって、全く見えなくなってしまったのだ。


予期せぬ事態に慌てた私は、親に事情を話し、八百屋の主人に相談に行った。


そして観察しやすい位置で蛹になっている瓶を選んでもらい、割引をしてもらった上で瓶を追加で購入し、なんとか羽化までの観察記録を付け続けることが出来たのだった。


そしてそのおかげで、私はその年の夏休みの自由研究を、無事に学校に提出することが出来たのである・・・・・・。


ところで八百屋に山積みにされていたカブトムシの幼虫は、幼虫の時も蛹になってからも、ガラス面にピタリと貼り付いていて、とても観察しやすい位置にいるのに、それを購入して家に持ち帰ると、なぜか幼虫はビンの中央付近に移動してしまい、見えなくなってしまうことが多かった。


これはいったいどうしてなのかと、八百屋の主人に聞いてみたところ、八百屋では閉店後は周囲が真っ暗になるが、家庭では部屋に灯りがいつまでも点いているため、幼虫が灯りを避けて暗いところへ移動してしまうのだろうとのことだった。


そしてこれを防止するためには、瓶を下駄箱や押し入れなどの暗い所に置いておくか、黒く塗った厚紙などで、周りをすっぽりカバーしておき、観察する時だけ瓶を取り出して見るといいとのことだった。


しかし、子供の心理としては、カブトムシの幼虫をいつでも見られるようにしておきたいというのがあって、きっと自分には無理だろうなと内心密かに思っていたものだ・・・・・・。


このように当時は商店街の八百屋には、なぜか夏になるとカブトムシの幼虫が大量に入荷して子供たちに大人気だった。


当時は毎年当たり前のように見られる光景で、別に気にもしていなかったのだが、今こうして振り返ってみると、なぜ八百屋でカブトムシの幼虫を売っていたのか、謎としかいいようがない。


また、八百屋では秋になると、スズムシも小さなかごに入れて売られていた。
八百屋の主人は毎日、売り物のキュウリやナスを包丁で小さく切って、スズムシのかごに入れてやっていた。


スズムシはカブトムシほどは大量に入荷しなかったが、店の数ヶ所にスズムシの入った小さなかごが重ねられ、綺麗な声で鳴いていたのを覚えている・・・・・・。


(画像上、色鮮やかなイモカタバミの花。画像下、花付きのいいツツジの花)


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