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2020年9月12日 (土)

「昭和の商店街」中華そばの店

Photo_20200912091001

私はラーメンが好きだ。


しかし、一口にラーメンと言っても色々あるものだ。


地方に行くと、もともとそんなご当地ラーメンはなかったのに、観光客を呼び込むためだけに、地域の特産品をあれもこれもと、無理やり詰め込んで作ったようなラーメンがある。


そのようなラーメンはいくら話題になっていても、私は少しも食べたいとは思わない・・・・・・。


また、長い行列がテレビでしばしば話題になる、豚骨醤油ベースの「家系ラーメン」も私はちょっと苦手である。


個人的にはラーメンを食べるためだけに、そんな行列に並ぼうとは思わないし、そもそもそんな時間もない。


また、最近は新進気鋭の斬新な発想のラーメン店も増えて来ているが、これらについても個人的には全く興味がない・・・・・・。


そういう意味では、私はラーメンが好きというよりも、昔ながらの「中華そば」が好きなのかもしれない。


私が子供の頃は、ラーメン店の店先には決まって、「中華そば」と大きく書かれた、赤や白の「のれん」が掛けられていたものである。


当時、横浜でラーメンとか中華そばと呼ばれていたものは、いわゆる「東京ラーメン」と言われるスタイルのもので、鶏がらに野菜や豚骨を加えて煮出した澄んだスープに、しょうゆで味付けをしたものだった。


そしてラーメンに乗っていた具材は、店によって多少の違いはあるものの、チャーシューが一枚、メンマ、ナルト、茹でた小松菜、半分にカットされた茹で卵、焼きのり、刻みネギの組み合わせが最も多かった。


最近はナルトや茹でた小松菜が乗っているラーメンをほとんど見なくなってしまい、中華そば好きとしてはなんとも残念でならない・・・・・・。


そして今ではちょっと考えられないが、当時はラーメン一杯は400~450円が普通だった。
500~550円出せばチャーシューメンが食べられたものである。


また、当時はその店のメニューが美味いかどうかは、「ラーメンを食べてみれば分かる」と言われていて、まず一番シンプルなラーメンを食べてみて、それが美味かった店は、たいていどのメニューを頼んでも失敗することはなかった。


これについては、いったい誰が言い出したことなのか定かではないのだが、不思議なことに当時私が食べた店では、100パーセント当たっていた・・・・・・。


その当時、私が個人的に、「この店が一番美味いっ!」と感じていたラーメン店は、ラーメンを始めとする麺類のメニューが、とにかく絶品だった。


ギョーザやチャーハンなど、麺類以外のメニューももちろん美味かったのだが、ラーメン類の美味さが飛び抜けていて、今日はご飯ものを頼もうと思って店に行っても、気が付けばついつい、ラーメンやチャーシューメン、野菜ラーメンなどを頼んで食べていた。


そして、この店のちょっと変わった特徴の一つに、「とにかく信じられないくらいスープが熱い」ということがあった。


ここまでスープが熱いと、昔のコントでよくあった、店員の親指がスープの中に入っていたなんてことは、間違っても起きないだろう。


なぜならそんなことをしたら、恐らくただの火傷では済まないはずで、親指が煮えてしまうぐらいのことになると思う。


こんな風に書くと、「何を大げさな・・・」と思うかもしれないが、これは決して大げさに言っているのではない。


なにしろこの店のラーメンは、口の中を火傷して、薄皮を2~3枚剥がすぐらいの覚悟がなければ、決してオーダーしてはいけない一品なのだ・・・・・・。


「それなら冷ましてから食べればいいじゃん」と思うかもしれない。


しかし不思議なことに、この店のラーメンのスープは、なぜかいつまで経っても、一向に冷めないのである。


ラーメンが入っている器に秘密があるのかとも思ったが、どこからどう見ても、どこの店にもある普通のラーメン用の器にしか見えなかった。


それにそもそも、ラーメンを冷ましてから食べたりしたら、麺が伸びてしまって美味くないではないか・・・・・・。


Photo_20200912091101

そしてこの店のラーメンは、一度その味を知ってしまうと、とてもじゃないが冷めるのを待っていることなんて出来なかった。


とにかく、「はい、お待ちどうさま!」と、目の前に出来たてのラーメンを置かれると、激熱なのは分かっているのに、もう一刻も早くスープや麺をすすりたくなってしまうのである。


そして食べ終わった後は、毎回必ず上あごの薄皮がベロンベロン剥がれて来て、カップのかき氷を買って食べながら、口の中を冷やしていたのを今でもはっきりと覚えている・・・・・・。


ところでこのラーメン店では、なぜかいつも店の人が、複数の指に指サックをはめていた。
しかも両手の指にである。


最初の頃は、「なんで指サックなんてはめてるんだろう。さっきまで事務作業でもしてたのかな・・・?」と思っていたのだが、そのうちにラーメンの器を素手で持つのは、熱くてとてもじゃないが無理なので、指サックをはめることで、熱さを軽減しているらしいということに気付いたのだった・・・・・・。


確かにこの店のラーメンは、器を持ってスープを飲むことはまず不可能で、必ず器はテーブルに置いたまま、レンゲを使って飲むしかなかった。


この店ではラーメンを提供する側も、食べる側も、ちょっと気を抜いていると、いつ大火傷をしてもおかしくなかったのである。


このため誰もが自ずと口数は少なくなり、シーンと静まり返った店内では、常にラーメンとの真剣勝負がそれぞれのリング上で展開されていた。


厨房の中では「店主VSラーメン」、店内では「店員VSラーメン」、テーブルの上では「客VSラーメン」といった具合である。


そして堪え切れずに思わず、「あちちちちちっ!」などと口走ってしまったら最後、その瞬間に勝負は決し、彼(彼女)は二度とこの店のリングに立つことは出来なくなるだろう。


厨房の中で店主が中華鍋を振る音が、なんだか勝敗が決まったことを知らせるゴングの音に聞こえて来る・・・・・・。


余談だが昭和の頃のラーメン店というのは、なぜかテレビを天井ぎりぎりの所に設置している店が多かった。


しかも当時は14インチぐらいの小さなテレビを置いている店がほとんどだったので、下から見上げて見ても、何が映っているのかよく分からないのだ。


しかも私の行きつけの店では、テレビを乗せるために取り付けてある棚板が大き過ぎて、角度によっては画面の下半分が全く見えていなかった。


このためテレビはいつも点いていたが、それを見ている客は一人もいなくて、ラジオのように音声だけを耳で聴いていた。


もっともテレビに気を取られて、チラチラと画面を見たりしていたら、きっとこの店では火傷をする客が続出していただろう。


だからあえてテレビを見えづらくしていたというのは、ちょっと考え過ぎだろうか・・・・・・。


(画像上、今が盛りの白花のサルスベリ。画像下、9月に入りツクツクボウシの数が一気に増えた)

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