「謎フレーズ探偵」たんたんたぬきの金玉は
「た~んたん、た~ぬきの、き~んた~まは~、か~ぜもないのに、ぶ~らぶら~ ♪」という歌をご存じだろうか?
・・・と、一応そのように書いてはみたものの、恐らく「知らない」と答えるかたは、限りなくゼロに等しいと思う。
もし仮に、「日本でもっとも有名な、どうしようもない歌ランキング」というのがあったら、この歌はまず間違いなくベスト5には入っているだろうし、もっと言ってしまえば、個人的にはこの歌が1位なんじゃないかとも思っている。
この歌はそれぐらい日本全国の幅広い世代の人が知っている、「どうしようもない歌」なのである・・・・・・。
しかし、この手の歌というのは、ある一定の世代の人は知っていても、年配の人や若い人は知らなかったりするものだ。
また、自分たちが子供の頃に歌っていたものと、現在歌われているものでは、明らかに歌詞が変化してしまっているということもよくある。
ところがこの歌は、歌詞の前半部分に関しては、日本全国どこへ行っても、全く同じフレーズで歌われていて、しかも数十年間、その内容は全く変化していないのである。
音楽の教科書に載っているとか、テキストとして何らかの形で残されているのならともかく、人から人へ歌い継がれて行くだけという、なんとも原始的な方法で、よくぞここまで完璧に、代々継承されて来たものである・・・・・・。
ちなみに、「た~んたん、た~ぬきの、き~んた~まは~、か~ぜもないのに、ぶ~らぶら~ ♪」に続く後半の歌詞に関しては、私が子供の頃(昭和50~60年代)から、すでにいくつかのバリエーションが存在していた。
それをいまからいくつかご紹介してみたいと思う・・・・・・。
「たんたんたぬきの金玉は(A)」
た~んたん、た~ぬきの、き~んた~まは~
か~ぜもないのに、ぶ~らぶら~
そ~れをみ~ていた、お~やだぬき~
おなかをかかえて~、わっはっは
「たんたんたぬきの金玉は(B)」
た~んたん、た~ぬきの、き~んた~まは~
か~ぜもないのに、ぶ~らぶら~
そ~れをみ~ていた、お~やだ~ぬき~
か~たあし、あ~げて、ぶ~らぶら~
歌詞Aと歌詞Bは、子だぬきの金玉が、風もないのに、ぶらぶらと揺れている様子を親だぬきが見ていて、そのことを面白がっているという、親だぬき目線の歌である・・・・・・。
「たんたんたぬきの金玉は(C)」
た~んたん、た~ぬきの、き~んた~まは~
か~ぜもないのに、ぶ~らぶら~
そ~れをみ~ていた、こ~だぬきも~
お~やのまねして~、ぶ~らぶら~
「たんたんたぬきの金玉は(D)」
た~んたん、た~ぬきの、き~んた~まは~
か~ぜもないのに、ぶ~らぶら~
そ~れをみ~ていた、こ~だぬきは~
ぼ~くもほしいと~、な~きだした~
歌詞Aと歌詞Bでは、子だぬきの金玉が、風もないのにぶらぶらと揺れている様子を、面白がって眺めている親だぬき目線の歌だったが、歌詞Cと歌詞Dでは、親だぬきの金玉が揺れているのを眺めている、子だぬき目線の歌になっている・・・・・・。
で、どちらが正しいとか、どれが元歌だったのかということに関しては、残念ながら正直よく分からないとしか言いようがない。
というのも、私が子供の頃には、すでに複数のバリエーションが存在していて、判断の付かない状態になってしまっていたからだ。
ただ、ひとついえることは、「たんたんたぬきの金玉は」という歌は、もはや言うまでもないと思うが「替え歌」である。
そしてその元になった歌や曲については、いまさら調べるまでもなく、すでにちゃんと判明しているのだ・・・・・・。
じつはこの歌のもとになった曲は、小学生が歌う唱歌で、「夏は来ぬ」というタイトルで知られている。
「国民唱歌集」という1891(明治24)年発行の本にも掲載されていることから、替え歌の方もそれなりに歴史があるものと思われる。
ちなみに「夏は来ぬ」というタイトルを見ても分かる通り、「たぬきの金玉」などいっさい何の関係もない歌であることは、もはや言うまでもない・・・・・・。
そしてややこしい話になって来るが、この「夏は来ぬ」には、さらに元歌が存在している。
じつはこの歌は、もともとは「Shall We Gather At The River」という聖歌だったのだ。
邦題は「まもなくかなたの」で、1864年にアメリカで発表された曲になる。
それにしても、聖歌が唱歌になったまではよかったが、そこからどこをどう間違えたら、「たぬきの金玉」に行き着くのだろう。
そうは言っても、日本では「たぬきの金玉の歌」が誕生していなければ、この曲がここまで有名になることなんてなかっただろう。
現代人は唱歌、「夏は来ぬ」を知らないのだから、そういう意味では、「たぬきの金玉の歌」は、じつはすごい歌で、この歌の作者(恐らくそこらへんにいる子供だったのだろうが・・・)は、偉大な功績を残したといえるだろう。
ただ、今となっては、それがどこのだれだったのか、皆目見当もつかないのである・・・・・・。
(画像上、気温が下がると花色が鮮やかになるスイフヨウの花。画像下、雑木林ではナラタケが爆生中・・・・・・)
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