« たばことビールの自動販売機 | トップページ | 「昭和の遊具」空中シーソー(回転シーソー) »

2023年11月13日 (月)

異世界への入り口

Photo_20230923093501
▲道の脇にあるちょっと開けた空間に1本の柿の木が立っている。私が中学生の頃に、「異世界への入り口」と呼ばれていた柿の木だ。当時は下校時にここで休憩している学生をよく見かけたものだ・・・・・・。

私が中学生の頃、通学路の道端に、1本の柿の木があった。


その柿の木は以前は幹が二股になっていたようだが、何かの理由で手前の幹を伐採したらしく、幹の根本付近が手前に大きくせり出して、洞のような形になっていた。


洞といっても、ポッカリと穴が開いていたという訳ではなかったので、当時は学校帰りに、そのくぼみの部分に腰を掛けて、休憩している学生をよく見かけたものだった・・・・・・。


そんなある日、柿の木の前を通りかかると、その日に限ってなぜか切り株には誰も座っていなかった。


私は「へ~、珍しいこともあるもんだな~」と思いながら、柿の木の前を通り過ぎようとしていた。


しかし、ちょうどその時、視界の片隅に何か妙なものが入り込んで来たのが分かった。


私はそれに何気なく視線をやると、思わず「ギョッ!」として立ち止まった。


そこに何があったのかというと、なぜか柿の木の前に、真っ赤なハイヒールが無造作に脱ぎ捨ててあったのだ。


恐らく誰も座っていなかったのは、このハイヒールが原因だろう。


最初は「誰かが新しい靴を買って来て、古いハイヒールを脱ぎ捨てて行ったのだろう」ぐらいにしか思っていなかった。


ところがどうもそうではなかったらしいのだ。


なぜかというと、そこに脱ぎ捨ててあった赤いハイヒールは、どう見ても真新しく、何年も履き込んでいるもののようには、とても見えなかったのである。


では、このハイヒールの持ち主は、いったいどうやって、この場から立ち去ったというのだろう。


まさか裸足でということはないだろうし、仮に何らかの理由で靴を履き替えたのだとしても、ここにハイヒールを残して行く意味が分からない。


で、この赤いハイヒールは、2日間その場に放置されていたのだが、3日目の朝には忽然と姿を消していた・・・・・・。


それから半月ほどたったある日、学校からの帰り道にあの柿の木の前を通ると、またしても木の前に何かが落ちているのが分かった。


「今度はなんだろう?」と思い、柿の木の前まで行ってみると、まず手前に小学生のものと思しきスニーカーが転がっていた。


そして切り株の右側には、小学校で使う絵の具セットが、きれいに立てた状態で置かれていた。


絵の具セットのケースの色は「青」だったので、どうやら持ち主は男子小学生のようだった。


なぜそんなことが分かるのかというと、私が小学生の頃は、絵の具セットの色は、男子が「青」で女子が「赤」と決まっていたのだ。


で、そんなことはともかく、彼はこんな所に絵の具セットを置いたまま、いったいどこへ行ってしまったというのだろう。


しかも、靴も履かずにである。


そもそもなぜわざわざ靴を脱いだりしたのだろう・・・・・・。


Photo_20230923094201
▲これが私が中学生の頃に、「異世界への入り口」と呼ばれていた洞。当時はもっと平らだったのだが、知らぬ間にこんな風に斜めに変形してしまっていた。形は変わってしまったものの、数十年間もこの場所に変わらず立っているってすごいことだと思う・・・・・・。

状況としては、赤いハイヒールの時と、さして変わってはいないのだが、今回はひとつ分かったことがあった。


何が分かったのかというと、「どうやら小学生の彼は、あの柿の木の洞に、間違いなく座っていた」ということである。


なぜなら彼の絵の具セットは、ちょうど柿の木の切り株の右側に立てた状態で置かれていたからだ。


つまり道の方を向いて切り株に腰かけた場合、右手に持っていた絵の具セットを、そのまま自分の脇に置くと、ちょうどこの位置でピッタリなのだ。


そして彼が履いていたスニーカーのつま先も道の方を向いており、彼がここに座っていたことを示唆していたのだ。


そしてそれはあの赤いハイヒールの時も同様だった。


ということは、2人はやはりここに座っていたと考えるのが妥当だろう・・・・・・。


そんなことがあってから、誰が言い始めたのかは定かではないが、いつしかこの柿の木の洞は異世界に通じていて、切り株に座ると洞に吸い込まれてしまうのだという都市伝説が生まれていた。


仮にその話が事実だとして、切り株に座った者が洞に吸い込まれてしまったとする。


しかし、それならどうしてわざわざ、彼らは靴を脱いだりしたのだろうか。


そもそもこれから洞に吸い込まれようとしている人が、靴を脱いでいる余裕などあるはずがない。


普通に考えたら、何も考える暇もなく、洞の中へ「ズボッ!」と吸い込まれて行ってしまうだろう。


それとも異世界というのはじつは土足厳禁で、「まずそこで靴を脱げ!」的なことを、背後からささやかれるのだろうか。


「金を出せ!」と背中にピストルを突き付けられているような状況を想定するなら、大人しく言うことを聞かざるを得ないかもしれない・・・・・・。


それからしばらくして、友人と2人で柿の木の前を通ると、切り株の上に茶色い紙袋に入った何かが置かれていた。


手に取って見ると、それは近所にある「〇〇書店」の紙袋のようだった。


紙袋の口はきちんとテープが貼られていたのだが、持ち主らしき人物はなぜかどこにもいなかった。


そこで封を開けて中身を確認してみると、中には高校の参考書が一冊と、エロ本が2冊入っていた。


なんとも絶妙な組み合わせといえよう。


友人は柿の木の洞を指差しながら、「どうせ持ち主は吸い込まれちゃったんだから、これはもらって行こうぜ」と、都合のいいことを言うと、参考書だけを切り株の上へ戻して、エロ本一冊を自分のカバンへ入れ、もう一冊を私に差し出した。


参考書は2週間以上、その場に放置されていたが、エロ本2冊は私たちに拾われ、結果的に有効活用されることとなり、無駄にはならずに済んだのである・・・・・・。



« たばことビールの自動販売機 | トップページ | 「昭和の遊具」空中シーソー(回転シーソー) »

エッセイ」カテゴリの記事

オカルト(都市伝説)」カテゴリの記事

昭和」カテゴリの記事

中学校」カテゴリの記事

変わりゆく町並み」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« たばことビールの自動販売機 | トップページ | 「昭和の遊具」空中シーソー(回転シーソー) »

2024年2月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29    
無料ブログはココログ

にほんブログ村