あぶないみずぎ
▲「ファミコン版ドラゴンクエストⅢ」の公式ガイドブック、通称「赤本」がこちら。ちなみにドラクエⅠの公式ガイドブックは「黒本」、ドラクエⅡの公式ガイドブックは「青本」だった・・・・・・。
ドラクエの世界には、女性専用の装備品というのが存在する。
家庭用ゲーム機で発売されたドラクエシリーズで、女性専用の装備品が初めて登場したのは、1988(昭和63)年2月10日に発売された「ドラクエⅢ(ファミコン版)」からだった。
そしてその装備品が売られていたのは、旅立ってから間もなくして到着するアッサラームの町だった・・・・・・。
アッサラームの町は昼と夜ではガラッと雰囲気が変わり、夜になると町のステージでベリーダンスが披露される、いわゆる「大人の町」でもあった。
そんな町だからなのか、北東にある武器屋には、他の町では見たことがない、「アブない水着(公式ガイドブックの表記)」なる防具が売られていた。
で、この「アブない水着」こそが、シリーズ初の女性専用の装備品だったのである・・・・・・。
では、「アブない水着」とは、どのような防具なのだろうか。
そこで公式ガイドブックを開いて、そのビジュアルを確認してみると、基本的には胸元が大きく開いたワンピーススタイルの水着であることが分かる。
ただ、通常の水着と違うのは、胸のすぐ下あたりから、へその下あたりにかけて、トランプのダイヤのマークの形に、布地がカットされていて、胸が大きく露出するデザインになっていることだ・・・・・・。
そして、すでにお気づきのかたも少なくないと思うが、これは防具とは名ばかりのただの水着である。
その証拠に公式ガイドブックに記載されている守備力はたったの「+1」なのだ。
そして頼みの綱の特殊効果に関しても、特に何もなしと来ている。
普通に考えたら、こんな裸同然の格好では、モンスターの打撃を食らえば、一撃で大怪我間違いなしで、炎を吐かれようものなら、焼け死んでしまってもおかしくはないだろう・・・・・・。
で、特筆すべきは、こんな何の役にも立たない水着が、なんと「78000G」もすることである。
いったい何に対しての価格設定なのか、意味がさっぱり分からない・・・・・・。
ところでこの「アブない水着」、前作に当たる「ドラクエⅡ」の時に、すでにその構想はあったのだという。
容量の問題があって、結果的にボツになってしまったものの、「販売価格がべらぼうに高い」、「ムーンブルクの王女に装備させると、フィールド上のキャラクターが水着姿になる」という案が練られていたらしい。
そして、キャラクターの名前によっては、「いやよ、こんなもの!」と、装備するのを拒否されてしまうという仕掛けが考えられていたようだ・・・・・・。
▲公式ガイドブックに紹介されている「アブない水着」。確かにアブないのかもしれないが、その実態は防具というより、「ただの水着」と言ったほうが正解だ・・・・・・。
ところで、「ドラクエⅡ」といえば、MSXに移植されていたことをご存知だろうか?
今となっては、MSXといっても、何のことか分からない人の方が多いと思うので、簡単に説明しておくと、パソコンの入門機の、いわゆる「ホビーパソコン」という位置づけのマシンだった。
で、MSXに移植することで、使える容量が増えて、ファミコン版Ⅱではボツになってしまっていた「あぶないみずぎ」が、MSX版では晴れて採用されることになったのだ・・・・・・。
ファミコン版ドラクエⅢの「あぶないみずぎ」の入手方法は、「武器屋で購入する」というオーソドックスなスタイルであったが、MSX版ドラクエⅡでは、ムーンブルクの王女に何もアイテムを持たせない状態で、ラダトーム王に話しかけるとイベントが発生するようになっている。
ラダトーム王が、「こんなにかわいいのに、きるものもないとはかわいそうじゃ」と、宝箱から「あぶないみずぎ」を出して、プレゼントしてくれるのだ。
どうでもいいが、王様はいったい何の目的で、「あぶないみずぎ」を所持していたのだろうか・・・・・・。
そして王様から「あぶないみずぎ」をもらうと、なぜか教会の効果音が鳴り響き、「あぶないみずぎ」を着用したムーンブルクの王女の一枚絵が、画面にドーンと表示される。
しかも、全身の画像だけではなく、胸と下半身のアップがそれぞれ個別に表示されるというこだわりようだ。
この画像を見ると、「あぶないみずぎ」のデザインは、ファミコン版Ⅲの公式ガイドブックに掲載されているものと、基本的には同じなのだが、MSX版では胸元などにフリフリの装飾が付けられていて、どちらかというと、下着っぽい印象になっている。
ちなみにこの一枚絵、ドラクエのキャラクターデザインとはかなりかけ離れた、昭和アニメ風のデザインになっていて、妙に違和感を感じる仕上がりになっている・・・・・・。
そしてこの画像が表示された直後に、普段はひと言も発しない主人公が、思わず「おおっ、〇〇〇ちゃん!」と口走ってしまうのだ。
ちなみに「〇〇〇」にはムーンブルクの王女の名前が入ることになる。
いっしょにいたサマルトリアの王子も、「こいつはさいこうだぜ!」と興奮している様子。
そして、「あぶないみずぎ」を王女にプレゼントした張本人の王様も、「ああ、このとしまで、いきてきてよかったわい!」と感動している様子なのだが、思わず「このエロじじいがっ!」と、つっこまずにはいられない。
一方、リアルタイムで3人の感想を聞かされたムーンブルクの王女は、「そんなにみないで。わたし・・・はずかしい・・・」と、口でははにかんでいるのだが、先ほどの一枚絵の画像では、左手を腰に当てて、しっかりとポーズを取って見せている・・・・・・。
ところで、このMSX版ドラクエⅡの「あぶないみずぎ」には、ファミコン版ドラクエⅢの「あぶないみずぎ」にはない特徴があった。
なんと装備することで、特殊効果の「みとれる」の効果があったのだ。
早い話が敵が戦闘時にみとれてくれれば、そのターンの敵は、いっさい何もして来ないことになるわけだ。
やっかいな攻撃を仕掛けて来る敵には、これはとてもありがたい特殊効果になるだろう。
しかも、この「みとれる」は、驚くべきことに、ラスボスのシドーにも有効なのだ。
普段はしゃべらない主人公を、しゃべらせただけのことはあるといえよう・・・・・・。
ところでこのMSX版ドラクエⅡは、ファミコン版ドラクエⅢ発売の、わずか4日前に発売になっている。
参考までに付記すると・・・・・・、
ファミコン版ドラクエⅡは、1987(昭和62)年1月26日発売、
MSX版ドラクエⅡは、1988(昭和63)年2月6日発売、
ファミコン版ドラクエⅢは、1988(昭和63)年2月10日発売となる・・・・・・。
先ほども書いたように、MSX版ドラクエⅡには、あぶないみずぎに「みとれる」の特殊効果があった。
ところがその4日後に発売になったファミコン版ドラクエⅢでは、その特殊効果がきれいさっぱりなくなって、ただの「高額な普通の水着」になってしまったのだ。
たった4日の間に何があったというのか・・・・・・。
専門誌などを通じて、MSX版のあぶないみずぎの特殊効果のことを知ってしまうと、これについてはどうにもこうにも納得がいかない。
武器防具の店のおやじに文句を言ってやりたい気分でいっぱいだ。
しかも当時子供だった我々世代からしてみると、それを体験してみたくても、MSXなんて買ってもらえるはずもなく、ただ、ただ、悶々としながら、ファミコン版ドラクエⅢをプレイするしかなかったのである・・・・・・。










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