「半ドン」という極楽
「半ドン」という言葉をご存知だろうか。
半ライス、半チャーハンのように、どんぶりものを食べ切れないから、半分の量にしてもらうという意味ではない・・・・・・。
昭和の頃、会社は月曜から土曜までの6日間勤務が普通で、子供たちも当たり前のように、月曜から土曜まで学校に通っていた。
そんな中、土曜日だけは、午前中で学校は終わりだった。
これがいわゆる「半ドン」である・・・・・・。
ちなみに「半ドン」の言葉の由来は、「半分ドンタク」が訛ったという説がある。
「半分ドンタク」の「ドンタク」とは、オランダ語で「日曜日」という意味のようだ。
また、別の説もあって、「半分休みの土曜日」を略したともいわれている。
この他にも諸説あるようだが、早い話がいまとなっては、誰も本当の理由を知らないということだろう。
いったいどこの誰が言い出して、どういう意味だったのか、誰も記録なんて付けていないから、出所不明の謎の言葉になってしまったということだろう・・・・・・。
半ドンの日は午前中で授業が終わるので、朝からもう嬉しくてしょうがなかった。
平日だったら小学校は5時間目、6時間目まで授業があったので、下校時間は午後2時、3時が当たり前である。
ところが半ドンの土曜日は、午前中の4時間目で授業は終わりで帰ってよかったのだ・・・・・・。
しかし、ちょっとした問題もあって、4時間目の終了のチャイムが鳴ったからといって、「はい、さようなら~」とはいかなかったのである。
私も含めてとっくの昔に学生生活を終えた人からしてみると、きっと、もう忘れかけている記憶かと思うのだが、下校の前にはすることがあったはずである。
よ~く、思い出してみてほしい・・・・・・。
そう、「教室の掃除」をしなければいけなかったのだ。
しかも、午前中で授業が終了ということは、当然のことながら、給食は出ないことになる。
平日だったら、「めんどくせ~」と思いながらも、帰るためにはさっさと掃除を終えなくてはいけないから、みんな黙々と掃除をしていた。
しかし、半ドンの日は給食がない。
いつもだったら、「パパッ」といい加減に、いや手早く済ませてしまう掃除だが、給食を食べていないというだけで、びっくりするくらい身体が動かないのだ。
ダラダラやっているわけでもないのに、半ドンの日の掃除ははかどらず、いつもの倍近くの時間がかかっていたように思う。
このように、「腹が減っていると、こんなにも身体が動かなくなるものか!」ということを実感出来るのもまた、半ドンならではの醍醐味だったのである・・・・・・。
べつに掃除当番でなくても、昼食は家に帰ってからだったので、帰りの通学路はとにかく腹が減っていて、みんな子供とは思えないほど覇気がなく、まるで病人が行進しているかのようにトボトボと歩いていた。
きっと、端から見たら、異様な光景だったに違いない・・・・・・。
ヘロヘロになりながら家にたどり着くと、母親が昼食の準備をして待っていた。
家の昼ご飯だから、べつに手の込んだものが出るはずもなく、インスタントの袋麺や、冷蔵庫に入っているもので、パパッと簡単に作れるものが出されるのだが、不思議なことにこれが信じられないくらい美味く感じられた。
人間という生き物は、極限まで腹が減っていると、粗末な料理でもご馳走に感じるらしい。
いつだったか、母にその話をしたところ、ひっぱたかれそうになったのを覚えている・・・・・・。
昼食を食べ終えて、生命の危機を脱すると、急に正常な思考が出来るようになり、「いつもだったら、まだ学校にいて、5時間目の授業を受けているんだよな~」などと、ふと思うことがよくあった。
しかし、「今日は半ドンの日なので、自分はもう家に帰って来ていて、いまから半日は休みなんだ~!」と実感すると、嬉しさのあまり、思わず「キャッ!」だか「ウへェッ!」だか忘れたが、自然とへんな声が出てしまい、その開放感を大の字になって、じっくりと味わったりしたものだった。
狭い部屋で大の字になり、うっとりとした表情をして、ニヤニヤしている様子は、きっと「危険な香り」がプンプンしていたに違いない。
ちなみに公立の学校に、完全週休2日制が導入されたのは、2002(平成14)年からだった・・・・・・。
(画像上、毎年、立春の頃に咲き始めるマンサクの花・・・・・・。画像下、お猿さんの顔に例えられることが多いセンダンの冬芽葉痕・・・・・・)
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