トイレにはキンモクセイ
▲昭和世代の人なら、キンモクセイの花の匂いで、ピコレットやサワデーを思い出すというかたも少なくないのではないだろうか・・・・・・。
私が子供の頃は、トイレの芳香剤といえば、藤沢薬品工業のピコレットか、小林製薬のサワデーのどちらかだった。
どちらの商品もテレビCMをよく流していて、ピコレットは「花の香りの~、ピコレット~♪」、サワデーは「さわやかサワデー♪」がお決まりのフレーズだった。
ピコレットの方は天然パーマの天使の子供のキャラクターが、パッケージの真ん中に描かれていて、CMにもしっかりと出演していて印象的だった・・・・・・。
昭和の頃はトイレの芳香剤といえば、上部が細くなった円筒形をしており、固形の薬剤をプラスチックのカバーで覆っているのが定番のスタイルだった。
そしてそのプラスチックのカバーを上下させることで、薬剤の露出幅を調整し、香りの強弱を付けていた・・・・・・。
そして当時の香りの定番は、キンモクセイの花の香りで、どこのメーカーも一番人気だったといわれている。
そんなこともあって、当時はキンモクセイの花の香りを、「トイレの香り」といったり、橙色の花そのものを、「便所花」と呼んだりする人もいた。
最近ではキンモクセイの花の香りの芳香剤をほとんど見かけなくなってしまったが、当時はキンモクセイ一辺倒というくらい、トイレの芳香剤はキンモクセイの花の香りだったのだ・・・・・・。
ところで当時は全く疑問に思わなかったのだが、それっていったいどうしてなのだろう。
じつはこれについては、くみ取り式便所の時代まで遡る・・・・・・。
私が子供の頃はくみ取り式便所から、水洗式便所への切り替えが進む過渡期で、学校や自宅はすでに水洗に切り替わっていたが、町ではまだバキュームカーを見かける時代だった。
キンモクセイは庭木として普通に見られる身近な樹木だったが、なぜかトイレの近くに植えられていることが多かった。
このため当時はトイレの小窓から、キンモクセイの橙色の花を見ることも多かったものだ。
ご存知の通り、キンモクセイの花は、甘く強い芳香を発することから、花期に入ると町のいたるところが、キンモクセイの香りで満たされていった。
キンモクセイがトイレの近くに植えられていたのは、このことに目を付けた昔の人が、くみ取り式便所の臭い対策の1つとして、これを利用したということらしいのだ。
つまり、トイレの芳香剤の定番がキンモクセイの花の香りだったのは、メーカー発案というわけではなく、昭和の民家周りの風景から、「トイレにはキンモクセイ」を採用し、これが大当たりしたというのが真相のようだ・・・・・・。
▲いまではそのことを知る人は少なくなってしまったが、かつてヤツデの葉は、「うじ殺し」の殺虫剤として使われていた。これがヤツデが家の裏に植えてあった理由である・・・・・・。
ところでくみ取り式便所の時代に、キンモクセイと並んで、トイレの近くに植えられている樹木が、もう1つあったのをご存知だろうか。
それはヤツデで、昔の日本家屋では、家の裏に必ず植えられていた。
ヤツデはこれといっていい香りの花を咲かせるでもなく、ただ、ただ、天狗の団扇のような大きな葉を、何枚も繁らせるだけである。
ヤツデの名前の由来は、葉に8つの切れ込みがあることからで、別名をテングノハウチワ(天狗の羽団扇)と呼ぶそうだ。
では、どうしてヤツデは庭木の定番として、トイレの近くに植えられていたのだろう・・・・・・。
じつはヤツデの葉は、昔はうじ用の殺虫剤として使われていたことがあり、くみ取り式便所の時代には、「うじ殺し」として、その葉を使っていたのだそう。
ヤツデがトイレの近くに植えられていたのは、きっとその頃の名残なのだろう・・・・・・。
現在ではくみ取り式便所は絶滅し、昔ながらの日本家屋も少なくなったことから、家の裏にキンモクセイやヤツデが植えられている光景は、もうほとんど見かけなくなってしまった。
しかし、自然のものを生活に取り入れていたあの頃って、「なんかいいな・・・」と思ったりする・・・・・・。










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