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2025年9月10日 (水)

晦日祓い

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▲開発に取り残された土手に立てられた「みそかっぱらい」。昭和の頃はよく見かけたものだが、最近は住宅事情が変わったこともあってか、あまり見かけなくなってしまった・・・・・・。

子供の頃は無知だったこともあって、いろいろなものが怖かった。


例えば毎年正月休みの頃になると、近所の道端に突如出現する幣束があげられる。


幣束とは神道で神様に捧げる供え物や、祓いの儀式の際に用いられる道具のことだ。


その見た目は細長い木や竹の棒に、「紙垂(しで)」と呼ばれる特殊な形に切った白い紙を挟んだものといえば、分かってもらえるだろうか・・・・・・。


ただ、近所の道端に出現する幣束は、どういうわけか、とても小さいのである。


どのくらいの大きさなのかというと、柄の部分は割り箸ほどの長さしかなくて、そこに取り付けられている紙垂も、それに見合ったサイズということになる。


子供の頃は、前述のような知識もなかったので、「もしかして、呪いの儀式を行った跡なんじゃないか?」などど思っていた・・・・・・。


で、この幣束なのだが、どのような場所に出現していたのかというと、民家の塀の下に刺してあったり、道端の植え込みの下だったり、駐車場の隅っこだったり、畑の周りだったり、とにかく様々な場所に刺してあった。


子供たちの間では、この幣束を見つけても、じっと見つめてはいけないとか、絶対に触ってはいけないとか、幣束を見つけたら、視界から消えるまで、息を止めていなくてはいけないなどといわれて恐れられていた・・・・・・。


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▲住宅の脇のわずかに残された土の部分に刺してあった「みそかっぱらい」。最近は土が露出している場所が少なく、「みそかっぱらい」を刺す場所を探すのも一苦労のようだ。アスファルトの割れ目に無理矢理差し込まれていた場所もあった・・・・・・。

当時はいまと違って、スマホはおろか、パソコンすら普及していなかったので、「分からないことがあったら気軽に検索」なんて、夢のまた夢の時代だった。


このため分からないことがあった時は、誰かに聞くか、図書館や本屋に行って調べるしかなかった・・・・・・。


誰かに聞くにしても、誰に聞くのがベストなのかなんて分かるはずもなく、結局のところは、身近なところにいる友達に、とりあえず話してみるというのが定番だった。


いま思えば、聞いたところで、何一つ解決しない相手にばかり相談していたのだなぁと思う・・・・・・。


そんな状況だったので、「アレは魔女が呪いの儀式に使った道具だ」とか、「見たこともない老婆がアレを振って呪文を唱えていた」とか、「小人のババアがアレにまたがって、空を飛んでいるのを見た」などという、ろくでもない回答ばかりが収集されていた。


どうでもいいが、なんでこういう怖い話には、ばあさんがつきものなのだろう・・・・・・。


で、私はこの幣束が何なのかについて、ちゃんとした正解を知ったのは、大人になってからだった。


じつはこの幣束は、「晦日祓い」といい、多くの人は「みそかっぱらい」と呼んでいた・・・・・・。


晦日祓いは日本の民間の年中行事のひとつで、幣束は暮れに神社からもらって来る。


神棚のお札といっしょに配布されるところが多いようだ・・・・・・。


そしてその家の主人が、晦日祓いで、まずは家族全員の頭の上を祓い、その後、全ての部屋をお祓いして回る。


そして祓い終わった幣束は、家の外の土が露出している地面に刺して終了となる・・・・・・。


この行事の意味は新年を迎えるにあたり、悪いものを家の外に追い出して、家の中を清浄な状態にしてから、晴れて年神様を迎えましょうという意味合いがある。


そんなわけで、正月休みに近所の道端に出現していた幣束は、べつに恐れるようなものではなかったのだ。


誰だよ、「魔女が呪いの儀式に使った道具だ」なんていったやつは・・・・・・。



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