学校のジャージの色
私は中学に進学した時に驚いたことがいくつかあった。
そのうちのひとつが、体育の授業で着る体操服に、ジャージが含まれていたことだ。
小学生の頃は体操着といえば、四季を通じて、男子は半そでに短パン、女子は半そでにブルマーだった。
このため真冬なんて、肌が露出している二の腕や太ももは、凍り付きそうなくらい冷たくなっていて、体育の授業が終わる頃には、もはや凍死寸前だった。
あまりの寒さにおしっこがしたくなり、授業終了と同時にトイレに走ると、ちんちんがいつもの半分ほどの大きさに縮こまっていて、目ん玉が飛び出るほど驚いたものである。
私はちんちんは伸びるものだと思っていたのだが、このとき初めて縮むこともあるということを、身をもって知ったのだった。
そして、もしこのままずっと寒いところにいたら、ちんちんは体内に取り込まれて、なくなってしまうんじゃないかという恐怖すら感じていた。
そしてそんな生活を6年間も続けて来たというのに、中学に入学した途端に、ジャージが準備されているって、これはいったいどういう了見なのだろう。
寒さが緩和されるのは大歓迎だったが、それだったら、もう少し早く準備して欲しかったものである・・・・・・。
ところでこの中学のジャージ、デザインは全くいっしょだったが、濃紺、エンジ、緑と3色あって、学年によって、それぞれ色が違っていた。
といっても、学年が上がるたびに色が変わる訳ではなくて、入学時に濃紺だった場合は、3年間、濃紺のジャージを着ることになるのだった。
そして3年生のジャージの色が、翌年の新1年生のジャージの色になるというループ式になっていた・・・・・・。
じつは私は当初このシステムを全く理解していなかった。
そして中学に入学して数ヶ月が経過したころになって、友達からたまたまその話を聞かされて、ようやくそのことを理解したのだった。
そしてこの時、偶然とはいえ、自分のジャージの色が。濃紺の年で本当によかったと、心の底からそう思っていた。
なぜかというと、じつは当時の私は、濃紺、エンジ、緑の3色だったら、「濃紺以外は考えられない」と思っていたからだ・・・・・・。
その反対に「緑だけは絶対に着たくない」とも思っていた。
いま考えると、なぜそこまで緑が嫌だったのか理解に苦しむのだが、当時の私はなぜか「緑は格好悪い」と思っていたのである。
例えるなら、大人になって、「君は上下とも緑色のスーツを着なさい」と言われたら、恐らく多くの人は躊躇(ちゅうちょ)すると思うのだが、それと同じような感覚だったのだと思う・・・・・・。
そして、もうひとつのエンジに関しては、緑ほどの拒絶反応はなかったものの、当時の私にとって、赤系の色というのは、女性の服のイメージが強くあって、「出来れば着たくないなぁ」と思っていた・・・・・・。
ちなみにこのジャージの色は、いわゆる体操着の色にも対応していた。
体操着の色は上は男女ともに基本的に真っ白だったが、首や袖のゴムになっている部分に、ジャージと同じ色がライン状に入っていた。
また、私の記憶では体操着の下は、男子は学年に関係なく、白の短パンだったと思うが、女子はジャージの色と同じブルマーだった。
小学校では入学から卒業までの6年間、女子のブルマーは学年に関係なく、みんな濃紺だったので、中学入学当初は、これについてはどうも違和感があって、なかなか慣れなかったものである・・・・・・。
しかし、慣れて来ると、色によって、また違った印象に見えて、「意外といいものだなぁ」と思えるようになって来た。
で、何がそんなに「いいもの」なのかというと、濃紺など暗い色だと陰影がはっきりせず、フラットな感じに見えてしまうのだが、エンジや緑では明るい部分と、影になっている部分がはっきりとして、より立体的に美しく見えるようになるのである。
例えるなら、平べったい2Dのアニメキャラが、立体的な3Dのコンピューターグラフィックに進化したといったところだろうか。
言い方を変えるなら、ただののっぺりとしたお尻が、ピップアップエクササイズを積み重ねて仕上げて行った、丸くぷりっとした美尻に変身したのである・・・・・・。
で、面白いのは、この「魅力度」は、先程の私の「色の好み」とは、全くの真逆だったことである。
先ほども書いた通り、私の色の好みは、濃紺、エンジ、緑の順だった。
ところがここに中身であるお尻が入ることで、不思議なことにその魅力度は、緑、エンジ、濃紺へと変化するのだ・・・・・・。
で、この話を友人に話したところ、「それはただ単に、1年生よりも3年生の方が、身体の発育が進んでいるから、そう思えるだけなんじゃないのか?」と言われた。
違う!これだから素人は困るのだ。
1年生と3年生を比べても、何の意味もないのだ。
例えばそこに座っている舞子(仮名)が緑のブルマーを履いていると想像してみろ。
濃紺の時と全然印象が違うだろう?
・・・・・・と、いったような内容の話を、私は友人にとくとくと話して聞かせていた。
すると、突然「ガタン!」と音がして、舞子(仮名)がすくっと立ち上がり、こちらを振り返った。
そして、「わたしお姉ちゃんが3年生だから、ちょっと緑のブルマー借りて、履いてみようかな?」と言った。
そして少し間を置いてから、「あんたたちには見せないけどね!」と言うと、いたずらっぽくニヤリと笑った。
どうやら話は筒抜けだったようである・・・・・・。
(画像上、まるで雑草のように、どこからでも生えて来るタカサゴユリ・・・・・・。画像下、まだまだ、暑い日が続くが、秋を感じてキノコが地上に現れた・・・・・・)
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