子供の頃に吸った花の蜜
▲アゲハチョウの仲間に好まれる「オオムラサキツツジ」。花の根元には蜜がたっぷり入っていて、昭和の子供たちは登下校時に蜜をチューチュー吸いながら歩いていたものだ・・・・・・。
昭和の子供たちは、ツツジの花の季節になると、学校の登下校時に、道端のツツジの花を摘んで、花の蜜をチューチュー吸いながら歩いていたものだ。
ツツジの花の根元には甘い蜜が溜まっていて、摘んだ花の根元をチューチュー吸うことで、その蜜を味わうことが出来たのだ。
また、ツツジの花のそっくりさんで、花が2回りほど小さなサツキの花にも甘い蜜があって、当時の子供たちはツツジの花と同様に、花の蜜をよく吸っていたものである・・・・・・。
ちなみにツツジとサツキの花を見分けるポイントは、まず花の大きさを確認すること。
ツツジの花はサツキの花に比べると、倍以上の大きさがあって、これは実際に見比べて見ると、一目で違いが分かるポイントだ。
そしてツツジとサツキの花を見分ける2つ目のポイントは、雄しべの数を確認すること。
花の大きなツツジは、個体差はあるものの、雄しべの数は8~10本程度のものが最も多く見られる。
そしてもう一方のサツキの花は、雄しべの数はきっちり5本と決まっている・・・・・・。
ツツジとサツキの花は、アゲハチョウの仲間に特に好まれ、花期にはひっきりなしに花の蜜を吸いに訪れている。
当時の子供たちは、ホバリングを繰り返しながら、花から花へ梯子をしていくアゲハチョウの姿を見つめながら、「チョウがあんなに夢中になって吸っている花の蜜なんだから、絶対に美味いに決まっている!」と信じて疑わなかったものだ。
そしてアゲハチョウと競うようにして、開花したばかりの新鮮な花を探し当てては、花の蜜を吸っていたものである・・・・・・。
甘い蜜がある花といえば、スイカズラも忘れてはならない。
スイカズラは蔓性の植物で、周囲の低木などに絡みつきながら伸びて行く。
花期は5月から7月頃で、ちょうど梅雨の前ごろが花の最盛期になる。
花には甘い芳香があって、この香りで昆虫や人間の子供をおびき寄せている・・・・・・。
スイカズラの花は細長い形をしていて、蜜があるのは花の根元の部分。
細長い花を口にくわえて、蜜を吸いながら歩いていると、なんだか大人がたばこをくわえて歩いているみたいで、格好よく思えたものである。
どうでもいい話だが、当時好きな女の子の前で、蜜を吸い終わったスイカズラの花を、格好をつけて「プッ!」と吹き捨てている男子がいた。
しかし、肝心なところを、その女の子が見ていなくて、それに気付いた彼は、そっと後ろを向いて、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
少し離れた場所で偶然その様子を目撃してしまった私たちは、必死になって笑いを堪えながら、「馬鹿っ!あいつ馬鹿っ!」を連呼していたものである・・・・・・。
ところでスイカズラの花は白色だが、その後、黄色から橙色へと変化して散っていく。
子供の頃はそんなことは知らなかったので、花の色によって蜜の味が違うんじゃないかと、吸い比べてみたりしたものだが、散り際の花に蜜がある訳がなく、咲き始めの白い花が、最もジューシーでフレッシュだったのは、もはやいうまでもないだろう・・・・・・。
▲蔓性の植物のスイカズラの花も蜜が豊富だ。ツツジの花と同様に花の根元に蜜がたまっている。ツツジやサツキの花が終わった頃に咲き出すのでありがたかった・・・・・・。
誰もが知っているサルビアの花も蜜を吸える花として有名だ。
サルビアの花期は6月から11月頃までと長く、家の庭で育てていれば、かなり長い期間、蜜の味を楽しむことが出来る・・・・・・。
園芸植物として定着しているサルビアだが、じつは原産地はブラジル。
植物は種を作るために生き物に花粉を運んでもらわなければならないが、原産地でサルビアの花粉を運んでいるのはハチドリではないかといわれている。
ハチドリといえば、ホバリングをしながら、ストローのような細長いくちばしを器用に使って、様々な花の蜜を吸うエキスパートだ。
ということは、サルビアの蜜はハチドリのお墨付きということになるだろう。
どうりで甘くて美味しい訳である・・・・・・。
ところで誰に聞いても知らないといわれるのだが、2000年代の初めごろに、ロッテから「花の蜜」という名前のガムが発売されていたことがあった。
「花の蜜」というガムには、「つつじの香り」と「サルビアの香り」という、2種類の味のバリエーションがあって、「つつじの香り」はピンク色のパッケージ、「サルビアの香り」は薄紫色のパッケージだった。
ガムの包み紙には、「つつじ(サルビア)の花の蜜を吸ったことがありませんか?ほのかな花の香りと蜜の味をフルーツで包んだ、ちょっとなつかしいおいしさです。」と小さく書かれていた。
ちなみに花の蜜は、当時の主流だった、「板ガム」として発売になっていた。
きっと、このガムがいま発売になっても、若い世代には「何のことやら?」なのだろうが、昭和世代には懐かしく感じられて、手に取る人が多いのではないだろうか。
個人的にはぜひとも復刻して欲しいガムのひとつである・・・・・・。
昭和の頃、花の蜜を吸うことは、「野遊び」のひとつだった。
花の蜜を吸うことがきっかけになって、その植物の種類や花期を覚えたり、花を訪れる昆虫の種類や生態を覚えたりしたものだ。
それが現在では、「ツツジの花には毒がある種類もあるので、むやみに蜜を吸ったりしない方がいい」と言われるようになり、毒性がないツツジとの見分け方を教えようともしないのだ。
ちなみに日本産のツツジで毒性があるといわれているのは「レンゲツツジ」だけである。
植え込みなどでよく見かける「ヒラドツツジ」には毒はない。
こうしてみると、なんだかつまらない世の中になったものである。
私は昭和世代で本当によかったとつくづく思う・・・・・・。
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