フイルムの自動販売機
▲現在ではこの画像を見ても、なんなのか分からないという人も、決して少なくないのだろう。じつはカメラのフイルムはこのようなケースに入って売られていたのだ・・・・・・。
昭和の頃には当たり前のようにあったのに、いつの間にかなくなってしまった自動販売機というのがいくつかある。
例えば「フイルムの自動販売機」がそうである・・・・・・。
デジタルカメラが登場する以前は、カメラにはフイルムを入れる必要があり、撮り終わったフイルムは現像に出さなくてはならなかった。
デジタルカメラでいうところの、メモリーカードの役割を果たしていたのがフイルムだったのである。
メモリーカードは容量にもよるが、一度買ってしまえば、相当な枚数を記録することが出来るが、フイルムは24枚撮りか36枚撮りが主流だったので、カメラに装填していたフイルムを撮り切ってしまったら、その都度、新しいフイルムに交換しなくてはならなかった。
このため、どこでも手軽にフイルムを入手出来るよう設置されていたのが、「フイルムの自動販売機」だったのである・・・・・・。
「フイルムの自動販売機」は、近所では商店街の道端や、DPE店の前などに設置されていたが、観光地では目に付く場所には、複数のメーカーのものが必ず並べて設置されていた。
「フイルムの自動販売機」は、富士フイルムやコダック、コニカなど、各フイルムメーカーごとにあって、取扱商品の中にはフイルム以外にも、当時人気だった「写ルンです」をはじめとする、「レンズ付きフイルム」もあった・・・・・・。
ところで、カメラのフイルムには、カラーネガフイルム、カラーポジフイルム(リバーサルフイルム)、モノクロフイルムの3種類があった。
このうち「フイルムの自動販売機」で売られていたのは、最も一般的といえる、カラーネガフイルムだった。
「写ルンです」をはじめとする、レンズ付きフイルムもこのカラーネガフイルムになる・・・・・・。
カラーネガフイルムは、撮影した写真を紙にプリントして観賞することを目的としたフイルムになる。
ちなみにカラーネガフイルムの「ネガ」という言葉は、反転という意味の「ネガティブ」から来ている。
カラーネガフイルムで撮影すると、色彩が反転して記録されることが、名前の由来となっている・・・・・・。
撮影したカラーネガフイルムを電気の灯りなどに透かして見ると、被写体の明るさが反転して写っていて、「?」と感じるのはこのためである。
そしてこれを専用の紙にプリントすることで、色の反転していない正常なカラーの写真に仕上がるのである。
当時はそれが当たり前だったので、べつになんとも思っていなかったが、いま考えると、デジタルカメラの仕組みよりも、ずっと難解に感じるものである・・・・・・。
カラーネガフイルムは最も扱いやすく、値段も安価だったので、当時はカメラのフイルムといえば、このカラーネガフイルムのことだった。
その反対にプロやアマチュアのカメラマンが使う、カラーポジフイルム(リバーサルフイルム)やモノクロフイルムは、その存在すら知らなかったというかたも少なくないと思う・・・・・・。
▲昭和の頃、フイルムを取り出した後のフイルムケースは、小銭や服のボタンなど、ちょっとした小物入れに使っていた・・・・・・。
ところでフイルムはカメラに装填しなければ何の役にも立たない。
このため当たり前の話だが、フイルムカメラにはカメラ内部にフイルムを入れるスペースがあった。
フイルムカメラはカメラの後ろ側に大きく開く裏蓋があって、これをパカッと開くと左側にフイルムを収める窪みが現れる。
そしてフイルムはただ入れただけでは撮影することは出来ず、フイルムを少し引き出して右側の巻き上げ軸に差し込む必要があった。
フイルムがちゃんと差し込まれていないと、フイルムを巻き上げることが出来ず、写真を撮影することは出来ないのだ。
ここまでやって、ようやく裏蓋を閉じるのだが、撮影準備はまだ終わらない・・・・・・。
フイルムの巻き上げが手動だった頃は、フイルムカウンターが「0」になるまで、巻き上げと空シャッターを繰り返す必要があった。
そしてフイルムカウンターが「0」になって、はじめて撮影準備が完了したことになるのだ・・・・・・。
そのうちカメラにフイルムの自動巻き上げ機能が付いて、この作業を自動でやってくれるようになり、「シャーッ!」という巻き上げ音を聞きながら、「便利になったものだな~」と感動したものである。
それが現在では指先にちょこりと乗るほどの小さなメモリーカードを、カメラのスロットにワンタッチでスッと差し込むだけで、撮影準備は完了となり、しかもそこに数千枚もの画像を保存出来るようになった。
カメラには付き物だったフイルムがなくなって、こんなドラえもんの秘密道具のようなカメラが誕生することになろうとは、当時は誰も想像すらしていないことだったのである・・・・・・。
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